山崎響のセンチメンタル暴力ブログ

物語を書いたり、書評したり、あれこれ思ったり。 演劇、映画、小説、色々見たこと、聞いたこと、そんな事を書いてます。 気軽にコメント下さいねっ!

ふわふわのダブルロールじゃないとちょっと。
風になびいて届けマカロン。

彼氏狩り パート1

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人々の電脳化が当たり前になり、写真、ビデオなど外部記憶装置が不要になった世界。

個人を司る思い出、経験、記憶はファイルとして格納され、ネットを通じて簡単に、そしてリアルに共有できるようになって久しい。

言語で隔てられていた人種間のコミュニケーションも言語ソフトを電脳にインストールするだけでその溝は埋まった。

人類の並列化の夜明けはこうして始まり、今では感情、思考、匂い、感触までオリジナルと同質で体験できるようになっている。

それにより人々は、自分が自分であるとする根拠を脳にではなく肉体に求めていった。ニーチェのコギト・エルゴ・スムは今では笑い話として扱われている。

並列化した電脳にオリジナルは無いが、肉体と肉体を通じて感じ得るものは貴重な自分だけのものだからだ。

ネットが成立したその日からネットには数々のポルノが散らばっているが、それは遥か昔のように写真やビデオがアップロードされているわけではなく、人が体験したセックスの記憶そのものがアップロードされている。

ポルノスターから近所の人妻、リベンジポルノで晒されたどこかの大学生、高校生、そしてアイドル、女優、セレブ。

同質の追体験、生身の感触。

そして事件が起こり始める。


11月11日、東京渋谷センター街で25歳の男が意識不明の状態で発見された。

男は電脳化しており、不正な外部アクセスの形跡があったが、電脳以外に外傷はなく、所持品が盗まれるなどの被害もなかった。

一般的にこの手の犯罪は、金銭管理パスワードの強奪がメインであるが、男の口座は被害の10日前が最終アクセスとなっており、金銭目的の線は薄かった。

翌年1月3日、六本木旧ヒルズ跡公園にて、45歳のジャパンTVプロデューサーの死体が発見された。

この男も電脳化しており、不正アクセスされた際のプロテクトウォール破壊による電脳ショックによって死亡していた。

前述の男と同じように、その他の被害はなし。

手口が似ていることから同一犯による犯行と考えられた。

当初、警察は被害者2人の共通点は無いとしていたが、週刊誌「センテンススプリング」によって2人の共通点が明らかとなる。


「アイドルAの元カレ」


アジア圏で絶大な人気を誇り、人気絶頂のアイドルであるAとこの2人は過去に交際していた事実があると報道した。

その報道内容は、少女らしい奔放な一面や、アイドルらしからぬ裏の顔を暴露するセンセーショナルなもので、世界中に一気に拡散したが、当のアイドルAとその事務所は報道内容を強く否定し、訴訟を起こすと会見するまでに発展。

元々、センテンススプリングのスクープはゴシップ誌であり信頼性がなく、A側の態度が強硬なこともあって、事態は収束するかに思えた。

が、その翌日。

男性2人が盗まれた物が判明する。

JPN cute girl A's motokare というファイルがネットに出回ったのだ。

そのファイルは25歳男性と45歳プロデューサー両名の、アイドルAとのセックス記憶だった。

このファイルは拡散とコピーを繰り返し、瞬く間に収束不能なまでに広がり、人類の電脳並列化以来、最大規模のシェアを記録。

ファイルを通じ、アイドルAとのセックス体験をしたとされる人数は25億人にのぼると言われている。

ネット上のハブ電脳には、ファイルの感想が集まり、人々は面白可笑しく語り合った。

中でも、アイドルAのファン層の中心である未成年やotakuと呼ばれている人々の、「アイドルAで童貞を捨てた」という書き込みが5割を占めたことから「童貞を殺すファイル」と呼ばれるようになる。

さらに、「Aちゃんの中、とても温かかったよ」 という書き込みは、その気持ちの悪さと、的を得た共感からネット上で流行になり、アイドルAのHPにはこの書き込みが3億件以上並ぶことになるなど、異常な盛り上がりを見せた。

これを受けて、ヨーロッパに本拠地を置く性被害専門機関「メトー」は、一瞬のうちに数十億人にレイプされたのと同じ。との見解を述べ、関係機関へ迅速な法整備と対応を要求する声明をだした。

一部のアイドルAファンはこれに呼応するように「本当のファンならこんなことをやめろ」と収束を図ったが、ハッカーによって、そのファンたちのほとんどが電脳に「童貞を殺すファイル」をダウンロードしていることを暴露され、沈黙することとなる。

この一連の流れは、公的機関メトーが声明をだしたことにより、興味の無かった一般層にまでファイルの存在を知らしめることになり、メトーが言うところの「レイプ被害」をさらに広めることになった結果、性被害の守護者であるはずのメトーが加害者に加わるという皮肉をもたらした。

さらに翌週、この異様な状況下で、センテンススプリングは、2人以外の元カレの情報をスクープとして掲載。

元カレ一覧として、中学時代に付き合っていたB、C、D、アイドルになってからとして、事務所社長、ネットテレビ局プロデューサー、男性歌手、男性アイドルE、Fの7名の名前を公表した。

この週のセンテンススプリングは言うまでもなく過去最高売上を記録、株価も250倍まで跳ね上がるなど、世界の話題の中心に躍り出ることになる。

しかし、これによって 「彼氏狩り」 と呼ばれる一連の事件が発生する。



続く。



20180118 イ・ハイ lee hi 이하이 Golden Disc Awards

イ・ハイ(lee hi 이하이)

Golden Disc Awards の舞台をユーチューブで見た。

涙で声が詰まり歌えない彼女を見て胸が締め付けられた。

涙を流す顔を、カメラに見えないように背けていただけかもしれないけれど、

たびたび振り返るイ・ハイは、私には誰かに助けを求めてるように見えた。

これ以上歌えない。

無理だ。

誰か止めて。

そんな声が聞こえるような気がした。

できれば止めて欲しかったんだと思う。

幼稚園児がお遊戯会でお母さんを探しているような、そんな心細さを感じた。

途中、何小節も歌えなかったが、それでも彼女は声を振り絞った。

ケンチャナヨ

ようやく振り絞った歌詞だった。

私は彼女がジョンヒョンに言ってるようにも、彼女が自分自身に言ってるようにも、みんなに対して言ってるようにも思えたし、

言わなきゃいけなくて言ったようにも感じた。

喪服にも似た衣装の第二ボタンを、ぎゅっと手に握りながら歌ったサビは、いつものイハイではなかった。

私は彼女がK-pop star というオーディション番組に出た時から見ている。

当時高校生ながら、とても歌がうまく、低音が得意だったが、番組の中で高音も自分のものにしていった。

デビューしてからもそうだし、この曲をライブで歌う時もそうだったけれど、とても綺麗で伸びのある高音を歌えるようになった。

けれど、

この日のイハイが歌う「한숨(ため息)」は、叫んでいた。

喉から血を出すような歌い方、普段は絶対にしないような前かがみになって押し出す声。

そうでもしないと、歌えなかったし、

そうまでして歌っているんだとすぐに思えた。

とてつもない強さを感じた。

何がまだ21、2歳の彼女を支えているのか考えた時に、

ジョンヒョンに対する想いではないだろうかと思い、きっとそうだろうと感じた。

彼女は泣いていた。

この曲の歌詞が持つ意味を、この曲を歌う意味を、この曲に込められた想いを知っているからだ。



「他人には弱々しく映るため息かもしれないけれど、私は知っているよ。小さなため息を吐きだすことも難しい一日を送ったんだよね」

「だから、大丈夫。そのまま吐き出して。そのため息の深さを理解することはできないけれど」

「私が抱きしめてあげるよ」



彼女は言った。

この曲はジョンヒョンさんが他の人に言ってほしかったことを歌詞に綴ったようだと。

私もそう思う。

この歌詞は、誰かが言った言葉だとしたら、とても優しい歌詞だけれども、

言って欲しい言葉だとしたら、とても痛みに満ちている歌詞になってしまう。

そして、

残念だけれども、結果から言えば おそらく後者だった。

それを、イハイは誰よりも理解していたんだろうと思う。

これを歌う意味、歌う辛さを天秤にかけて、彼女は歌うことを選んだし、

選んだ以上は、しっかりやろうとして、

しっかりやり遂げた。

やり遂げた。私はそう思う。

その一方で、

まだ21,2歳の女の子に、こんな辛いことさせるなよ。と思った。

テヨンがインスタグラムで 助けてあげたかった。 と言ったのもほとんど同じ理由だと思う。

今回のイハイの姿には、

歌手としてのプロフェッショナルというよりも、

故人に対しての誠実さを感じて、

その想いに私もまた涙した。



ジョンヒョン、この曲を渡した相手は、とてもいい人だったよ。

苦しんでしまうくらいに、いい人だったから、天国からサポートしないとダメです。







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漢字を思い出せずに数日過ごしている。

横風が吹く街中で、マフラーに顔をうずめた時、

振り落ちる雪が、街灯のオレンジに染まる時、

手には缶チューハイとホットスナックが入ったビニール袋だったり、

スマホだったりする。

あの漢字はどう書くのだったっけ。

最近はパソコンばかりで、

漢字を書くことがなくなったからだろうか。

便利になり過ぎるのも困ったものだ。なんて、

白髪交じりのセリフが浮かんでは消える。

スマホで変換したらいいのだろうけれど、

どうしても自力で思い出したい気がするし、

自力で思い出さなければならないような気がする。

まぼろし という漢字はどうだったけ?

特別、思い出さなくてもいいような気もしていて、

日常では忘れているけれど、

夜の一人道、アルコールが入った深夜なんかに、

無性に思い出したくなって、

なのに思い出せなくて、諦めて眠る。

そんな風に繰り返す毎日の中で、

電話が鳴った。

お互いの近況なんかを話し合って、

なんとなく話が収まり始めたタイミングでバイバイを言ったのに、

「あ、そういえば」

という一言から、

最近好きな食べ物やら、テレビで何が面白いだとかの話が始まってしまって、

そこから気づけば一時間半経った。

電話を切って、

昔のことを少し思い出した。

電話相手だった彼女はよく笑う人だった。

そして、よく怒る人でもあった。

今思えば、隣で見せる笑った顔も怒った顔も好きだった。

丸く笑って、丸く膨らんで怒る。

そんなことを思い出してるうちに、とうとう思い出した。

まぼろしという漢字を。


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