「うわぁ~この天ぷら、
外はサックサク中はふっわふわでぇ
すっごく不味いですぅ」
あれ?
なんか間違えた気がする。
と思った時にはプロデューサーからカットが掛かって、
旅館の人は顔を引き攣らせていた。
あたしはまたやらかした。
目を真ん丸くして驚いた表情でぶりっ子して
何が不味いだ。あたしの馬鹿。
けれど、けれどこの天ぷらは本当に美味しくなかった。
どうして外をサクサクにして中をフワフワに出来たのに不味くなるんだろう。
だけど・・・なんか逆に「それって凄い!」
「なっ、何が、何が凄いってアサ子ちゃん」
「は?なんです?」
「今言ったじゃん、『それって凄い!』っていきなり叫んだじゃん」
「叫んでないっす!そんな、叫んでないです!」
「叫んだ!絶対叫んだ!俺が説教してる最中に叫んだ!なんかブツブツ言ってるし、俺の言うこと聞いてんのかなぁ~~?って思った矢先に叫んだ!」
「えぇぇー。叫びましたぁ?あたし」
「叫んだ」
「うん、叫んだ」
「絶対叫んだ」
「叫びました」
「そんな、女将まで、そんな言わないで下さいよぉ」
「ほら。女将だってそう言ってるじゃん」
「なら叫びました!すいません!」
「ていうか、アサ子ちゃん?俺が今何を言ってたか聞いてた?」
「え、いつですか」
「なっ、あんたがぶつぶつ何か言ってる時だよ!俺が説教したの聞いてたのかって!」
「っと~、説教ですか?」
「いい。もう~いい。お前なんか二度と使わない。お前みたいな三流タレント他にいくらだっているんだ!なんで俺がこんなおっぱいでかいだけのバカ野郎と仕事しなきゃなんないんだ!ちくしょう!ちくしょう!」
「お言葉ですが!P!うちのアサ子はおっぱいでかいだけのタレントではありません!けつだって同じくらいでかいです!」
「うるっせぇ!バカタレントのバカマネージャー!どこツッコんでんだバーカ!バーカ!」
「P!P!アサ子のマネージャーとして一つ言わせて頂いてよろしいですか?P!」
「つーかP!って呼ぶな!なんだP!って。プロデューサーのPか!?だったら名前プラスPだろ!斉藤Pとか工藤Pとか他の奴全員そうだろ!なんで俺だけ『P』なんだよ!軽んじてんのか!お前ら。俺をポップに呼ぶんじゃねーよ!」
「あ、それは謝ります!・・・っと、・・・っと~。アサ子・・・ちょっとアサ子、なにPだっけ?」
「え?やだ。マネージャーが知らない事あたしが知るわけないじゃん」
「えー、それは謝ります。・・・な~か~、中~山??P。すいませんでした」
「ちげぇし。誰だ中山。つーかなんで中山?」
「っぽいかなぁ~って」
「あーっ!わかる!っぽい!中山っぽいっすよ!P!すごーいマネージャー!超ぉ中山っぽいよ!」
「だろ?ぜってぇ中山だよね?」
「おいこら、むかつくイントネーションで喋ってんじゃねーぞ。ほんとなめてんだろ?な?次とか絶対無いから。うちの局で二度と使わないようにするから。天ぷら一つまともに食えねーどころか、説教は聞いてねー、プロデューサーの俺の名前も言えねー、な?そんなくそタレントとくそマネージャーがよぉ」
「あのぅ・・・くだらない言い争いしている所申しわけないんですが、ちょっとよろしいでしょうか?」
「くだらないって・・・。あ~、なんですか女将さん」
「最初のとこからずっと泣いているうちの大将の事も気にしていただけますでしょうか」
「え?なんで泣いてんすか大将」
「だって俺の天ぷらが不味いって・・・」
「え?あたし?あたしのせい?えぇぇぇ。だってこれほんとに不味いんだもん」
「ばかタレントが。ほんっと使えねーな、お前は。そんなわけないだろ。馬鹿舌のくせに不味いとか言ってんじゃねーぞ」
「じゃあ、食べて下さいよ!Pも」
「・・・、・・・、・・・」
「どうですか?あたし変な事言ってますか?」
「・・・いやぁ、大将。これは、ほんと、外はサックサクで…中はふわふわで ・・・揚げ方、上手っすねぇ~。揚げ方上手っすわ~。かなり揚げこんでますね~」
「え、ずるい!何ですかその言い方!言って下さいよ!味を!美味いか!不味いか!」
「いやぁ!ほんと!揚げ方が凄い!極上の揚げっぷり!ほとんどプロ!!流石です大将!」
「何それ!P!それはずるいです!言ってください!不味くないですか?それ。ね?すっごく。すっごく不味いですよね?あたし、間違って無かったですよね!?」
「いやぁ~。なんていうか、逆に凄い!ほんと。な?アサ子ちゃん。凄いわこれは。逆に」
「やだ!そんなんじゃあたし納得できません!散々バカだのなんだの言われたのに!ちゃんと言って下さい!」
「はぁぁぁ??なんでだよ?お前が馬鹿なのは変わんねーんだよ!言い方があるだろうが、それを何も考えず言葉にしやがって」
「けど!不味いっていうのは事実でしょ!謝って下さい。あたしに!もしくは天ぷらに!」
「なんで謝んなきゃなんねーんだよ!だったらこんな天ぷら出した奴が悪いんじゃねーか!謝るんならこんな物出した奴が謝るのが筋だろうが!」
「え?P・・・そうなるの?それは違う・・・」
「マネージャーは黙って!」
「アサ子もおかしい!なんかおかしくなってる!ちょっと待って!」
「ばかマネージャーは出てくるな!」
「Pまでそんな!けど、だって!だって大将が!大将が小指を落とそうとしてる!!」
「あ」「あ」
やってしまった。
流石に気が引けた。
気づけば女将の顔は、
壁に掛かっている般若のお面そっくりになっていて、
カメラマンさんや照明さんは泣きながら震えている。
その中であたしとPの二人は髪を引っ張り合っていて、
マネージャーはDSをし始めていた。
なんだこれ。
地獄ってこういう感じなのかな?
けど、ただの旅番組のロケがこんな事になるなんて「なんか面白い!」